一月二日 水曜日 晴
子規全集を読む。子規は三十六才で此世を去る。竜之介も三十六才で自らの命を断てり。自分も三十六になるの感慨実に大なるものあり。努めざるべからず。幸子我を指して俗臭強き人と云ふ。俗に徹するも亦よし。新生日本は神懸り人を排して偉大なる俗物を待望しあり。邦家のため愈々俗物たらざるべからず。 田中来り大槻伸治なる代議士候補者の選挙運動を手伝ふと云ふ。彼も亦我弟子にして俗物たらんと努めつゝあり。大いによき傾向なり。
今日より日記をつけ始める。願はくば俗臭紛々〔芬々〕たれ。元旦の朝ラヂオのスイツチを入れるや「奥様御手をどうぞ」のタンゴが奏せられつゝあり。誠に新しき年哉と三嘆した。確かに日本は変貌し脱皮しつゝあり。それにしても街頭の浅間しき女性の行動は何とかならぬものかしら。今日も街を歩き田中と憤慨す。 夜井尻姉弟再び来る。正月らしく遊ぶ。
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