はかない定めよ。うつし世は……
1922年(大正11)7月16日
七月十六日 土曜日 晴 起床六時 就眠十一時
夜父上と日暮しに行く。病中とはひきかえ、しめやかな中にもざわざわとしていた。
仏間にはゆるやかな蠟燭の光の中に、小さい寝棺は静かに静かにすべてのものの心をめいらす様に横 はっている。
小姉さまにひつぎのわきで従弟の顔を見せてもらう。
ろう[蠟]の様に美うるわはしい顔。かすかな微笑を浮かべる純な顔。私は思わず手を合わせた。数珠の上にあついあつい涙が落ちた。
はかない定めよ。うつし世は……
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